歯科医院の医業所得などの事業所得は次のように計算します。
総収入金額 - 必要経費 = 事業所得
事業所得に税金がかかってくるので、事業所得が少なくなれば、すなわち必要経費が多ければ、それだけ税金が安くなることになります。
そのため、必要経費になるものは漏れなく計上することが節税につながります。
ここで必要経費とは、次のものをいいます。
上記のうち、その年の必要経費になる金額は、その年において債務の確定した金額です。
歯科医院においては、
などが医業所得を計算するうえでの必要経費になります。
具体的には、次のようなものが歯科医院の必要経費として計上されます。
その他にも、電話代や交際費など、様々なものが、必要経費になります。
必要経費になるものは漏れなく集計することが節税になりますが、必要経費にならないものまで、例えばプライベートな飲食費などを、含めてしまうと脱税になってしまいます。
必要経費になるなならないかの判断が難しい支出も少なくないので、顧問の税理士に相談してくださいね。
歯科医院を開業するにあたっては、様々な費用がかかります。
会計上は、歯科医院の開業日までに発生した費用で、開業のために直接的に要した費用のうち、その支出の効果が将来に渡って及ぶものは、損益計算書の経費とするのではなく、貸借対照表の繰延資産である「開業費」として経理処理します。
歯科医院の場合、診療を開始した日を開業日にすることが多いと思います。
開業費の具体例
開業費の具体例としては、開業日までに発生した次のような費用になります。
これらの費用は、開業費として経理処理を行いますが、通常の費用と同様に、支払日、支払先、支払金額、支払内容などを会計ソフトに入力するとともに、領収書などの取引を証明する証拠を残しておきましょう。
なお、次のような費用は開業費にはなりません。
経費が増えれば利益が減って、納めなければならない税金も減ります。
このことから、歯科医院と税務署では、経費について次のように対立することになります。
そのため、税務調査においては、次のような視点で経費の調査が行われます。
すべての経費が税務調査の対象ではありますが、下記の経費は重点的に調べられる可能性が高くなります。
人件費は、歯科医院の経費に占める割合が高いため、要調査項目になります。
給与台帳やタイムカード、社会保険料の支払い具合などのチェックだけでなく、実際に通院して従業員の人数のチェックなども行っている場合もあります。
給料の帳簿上での水増しや、存在しない人に対する架空の給料の支払いなどは、必ずといっていいほどバレてしまいます。発覚した場合のペナルティは非常に重たくなるので絶対にやらないでくださいね。
また、配偶者や親族などに対する青色事業専従者給与についても調査されます。従事している業務内容に対して、支払っている金額が多額でないかどうか調べられます。もちろん、実際には働いていないのに支払っていることにしている、というのはダメですよ。
在庫・棚卸資産
在庫・棚卸資産の金額をイジることで、容易に利益操作が可能になってしまいます。
歯科材料や医薬品の実地棚卸の状況などを整理して説明できるようにしておきましょう。
家事関連費
家事家事関連費が、プライベート分と業務分に適切に按分されているか調査されます
プライベートと業務で兼用している自動車について、その減価償却や保険料、自動車税、ガソリン代などの按分は適切か、
住居兼診療所について、減価償却費や保険料、固定資産税の按分は適切か、
などが調査されます。
交際費
交際費とは、事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用をいいます。
家族や友人との個人的な飲食代は交際費にはなりません。
交際費であることを説明できるように、交際費を支出した際には、領収書に次のメモを書き残しておきます。
そして、このメモ書きは会計ソフトの摘要欄にも入力しましょう。
こんにちは、トーエイシステムの尼崎です。
今日は、どのような歯科医院に税務調査が入るのかについて説明したいと思います。
税務署も限りある調査官を有効に活用するために、間違いや不正があって税金を追加で徴収できる可能性が高いところに税務調査に入りたいと考えます。
では、間違いや不正がありそうなところを税務署はどうやって探すのでしょうか。
KSKシステム
そこで役に立つのが税務署にあるKSKシステムです。
KSKシステムとは、国税総合管理システムの略称で、納税者の税金の申告書の内容や納付の状態、その他様々な情報が入力されていて、その情報を一元的に管理しているシステムのことをいいます。
このKSKシステムのデータ分析結果から、税務調査に入る対象を選んでいるのです。
KSKシステムに選ばれやすい歯科医院には大きく分けて次の2種類があります。
過去の決算数値と比較して大きな増減がある歯科医院
例えば、
同業他社(他の歯科医院)の決算数値と比較して大きく乖離している歯科医院
例えば、
決算数値は、売上高や交際費などの金額の増減だけでなく、売上高利益率や売上高人件費率などの率も比較検討されます。
こうして、KSKシステムからピックアップされたところから、さらに調査官が絞り込んで税務調査先を決めるのです。
医業収入の税務調査については、次の2つに大きく分けることができます。
社会保険診療収入については、まずは保険点数との整合性がチェックされます。
保険点数×10円と社会保険診療収入との間に差異がある場合は、説明できるように準備します。
窓口収入については、値引きや未徴収分について、その内容と経理処理がチェックされます。
値引きなどについてはいったん収入として計上してから、相手が誰なのかによって次のように処理する必要があります。
窓口収入は、間違いや不正が起こりやすいポイントなので、税務調査においても細かく調査される場合があります。
現金を取り扱う窓口収入の管理がしっかりしていないと、他の項目もちゃんと管理できていないのではないか、という疑いを持たれてしまい税務調査の目がより厳しくなってしまう恐れもあるので注意してください。
自由診療収入
自由診療収入は、歯科医院によっては多額になるため、税務調査の調査官が関心を寄せる項目になります。
患者さんの確定申告に添付された医療費控除の領収書、歯科材料の消費具合や歯科技工士との取引量、診療予約スケジュール表など、様々な視点から計上するべき収入に漏れがないかどうか調査されます。